戦争と人権

  二十世紀は「戦争の世紀」であるとよく言われますが、戦争とは、人々の経済的、社会的、文化的、市民的、政治的権利を無視あるいは否定するものです。この意味で、戦争の問題は人権の問題そのものであると思います。

 戦争が引き起こす人権問題を考える場合、二つの構えが重要であると思います。一つは、物理的にも精神的にも身近な(可視的な)問題にのみ視線を向けるのではなく、物理的にも精神的にも遠く離れた(日常意識的には不可視な)問題にも視線を向けようとする構えです。もう一つは、共時的な人権問題(たとえば現在コソボで起きている問題)にのみ注視するのではなく、過去へも未来へも視線を向ける通時的な構えです。

 現在において(過去において、あるいは未来において)基本的人権が否定されている(否定された、あるいは否定されるであろう)無数の無名の不在の人々の「声なき声」を聴き取るという構えをもつことが、同世代や過去世代や未来世代に対する「責任」の前提になければならないと思います。

 今回の人権研修会は、ビデオ「大阪と朝鮮人強制連行」を見たうえで、朝鮮人強制連行真相調査団事務局長を務めている弁護士空野佳弘氏と、本学の外国人大学院生丁海縺氏をパネリストとして迎え、パネルディスカッションをおこないます。二十世紀の閉幕を前に、今一度、戦争と人権の問題を一緒に考えてみましょう。

(2000年度人権講演会の案内パンフレットに書いた原稿)

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