先天異常の胎児診断、特に妊娠初期絨毛検査に関する見解

1988年1月
日本産科婦人科学会会告

 妊娠前半期に行われる先天異常の胎児診断は、羊水検査、絨毛検査、胎児鏡、胎児採血、超音波診断などの方法が応用されているが、これらの胎児診断は倫理的にも社会的にも多くの問題を包含していることに留意し、以下の点に注意して実施する必要がある。

1. 胎児が患者である可能性(危険率)、検査法の診断限界、副作用などについて検査前によく説明し、十分なカウンセリングを行うこと。
2. 検査の実施は、十分な基礎的研修を行い、安全かつ確実な技術を習得した産婦人科医、あるいはその指導のもとに行われること。
3. 伴性(X連鎖)劣性遺伝性疾患のために検査が行われる場合を除き、胎児の性別を両親に告知してはならない。
 なお先天異常に対する個人の捉え方はさまざまであるので、検査の実施、その後の処置については十分に慎重でなければならない。

 妊娠初期絨毛検査法については、以下の点に留意して実施する。

1. 妊娠初期絨毛検査法は、下記のような夫婦からの希望があり、検査の意義について十分な理解が得られた場合に行う。
  a.夫婦のいずれかが染色体異常の保因者
  b.染色体異常児を分娩した既往を有するもの
  c.高齢妊娠
  d.重篤な伴性(X連鎖)劣性遺伝性疾患の保因者
  e.重篤で胎児診断が可能な先天性代謝異常症の保因者
  f.重篤でDNA診断が可能な遺伝性疾患の保因者
  g.その他重篤な胎児異常の恐れがある場合
2. 検査前に羊水検査との比較についても十分説明すること。
3. 検査の実施は多数例による基礎的研修の結果、安全かつ確実な絨毛採取法を習得した産婦人科医によってなされること。さらに、羊水検査を実施している医師によってなされること。また、夫婦に対する検査結果の告知は、遺伝学の先天異常の知識が豊富な産婦人科医によってなされること。
4. 絨毛細胞の培養が必要となることがあるので、細胞培養に関し、高度の技術を有するものが十分な設備を有する施設で行うこと。

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