パーコールを用いてのXY精子選別法の臨床応用に対する見解

昭和61年11月
社団法人 日本産科産婦人科学会
会長  飯塚 理八

 パーコールを用いてのXY精子選別法(以下「本法」と称する)とその臨床応用には,確実性,安全性,有用性などに,今後さらに検討されるべき点が多いので,本法の臨床応用は,現時点においては,重篤な伴性劣性遺伝性疾患を有する児を妊娠することを回避するためのみ行われるべきである。
 本法の臨床応用にあたっては,会員は以下の諸点に十分留意されたい。
                  記
1. 本法の実施者(臨床応用者)は,生殖医学に関する高度の知識及び技術を習得した医師でなければならない。
2. 本法を実施しようとする会員は,予め学会指定の書式(様式)に従って,学会に登録しなければならない。また,本法の確実性や安全性などについては,本会に報告することが望ましい。
3. 本法の実施者は,実施前に,被実施者に対して本法の概略や予想される成績等を予め十分説明し,夫婦の同意書をとり,これを保管しなければならない。
附記
(1) なお,重篤な伴性劣性遺伝性疾患を有する児の妊娠(ないしは受精)を回避するため以外の目的で本法の臨床応用を,厳密な意味での医療行為と判断するかどうかは,議論の多いところである。この問題に関しては,広く社会倫理的見解が集約されるのを待って,結論がくだされるべきものと考える。
(2) 本法に類似の研究やその臨床応用が,将来行われることや,現に行われていることも予想されるが,会員は,研究の進め方や研究成果の発表に関しては,本学会や所属施設等に設置された倫理委員会などの意見を,聴取することが望ましい。
*学会指定の書式(様式)は追って本見解の解説とともに機関誌に掲載する。
(日本産婦人科学会雑誌38巻11号所収)

 

「パーコールを用いてのXY精子選別法の臨床応用に対する見解」に関する解説

1987
日本産科婦人科学会

 「パーコールを用いてのXY精子選別法の臨床応用に対する見解」を日本産婦人科学会(以下「学会」)は機関誌の38巻11号に会告として掲載したが,この見解の趣旨を,できるだけ正確な会員各位の理解を得るために,補足解説文を付する事にした。なお,「見解」の作成に当たっては,人類遺伝学や生命倫理に関する権威者の意見の聴取が,できるだけはかられた。

解説
1.現時点における本法の臨床応用を,「重篤な伴性劣性遺伝性疾患を有する児」の「妊娠を回避するために限る」とした主な理由は,次の如くである。
 一般に,新たに開発された技術を臨床応用するさいには,希望者(ヴォランティア)を対象として,十分な臨床例について実施の上,その安全性や確実性なども客観的に評価する必要がある。しかし本法の場合,まだ,この段階を完了しているとは考えにくかった。したがってさらに症例を積み重ねることが必要であると考えた。しかし現時点においても,「重篤な伴性劣性遺伝性疾患を有する児」の妊娠を回避しようとして本法を試用するのであれば,期待されるメリットは,おそらく安全性の不確かさなどを上まわるであろうとの見解に到達した。
 しかしそれ以外の場合に,いわば恣意的に男女の産み分けを試みることについては,社会的コンセンサスもまだ得られていないので,見合わせてもらうことにした。
2.臨床応用の対象になり得ると学会が考えている「重篤な伴性劣性遺伝性疾患」とは,次のようなものである。
 進行性筋ジストロフィー(Duchene型),Nesch−Nyhan病,Hunter病,無ガンマーグロブリン血症,血友病AおよびB(クリスマス病),無汗性外胚葉異形成など。
3.本法の臨床応用に関して,当分の間,登録制を採用することを決定したが,これは,(1)学会としては,この技術を臨床応用している施設(会員)を掌握しておく必要に迫られているからである。また,(2)本法の確実性,安全性,有用性などを1日も早く確認して,世の疑問にこたえたいと念願しているからにほかならない。
 なお,本件に関する学会への登録は,下記の様式に従っていただきたい。登録機関が取扱った個々の症例については,後日あらためて,実施結果についての報告を依頼する予定である。

パーコールを用いてのXY精子選別法の臨床実施に関する登録
施設・機関名
住所(電話)
施設・機関責任名
実施責任者名
実施医師名
非医師協力者名
実施目的(または臨床応用の適応)
施設・機関の実施許可           有・無
(倫理委員会名および住所)
実施期間
(報告)
1.実施人数
2.実施目的
3.結果

(日本産婦人科学会雑誌39巻3号所収)

前のページに戻る