News LINK 消費者基本法 経済統計一覧

消費生活アドバイザーへのご招待

1.消費生活アドバイザーとは
 皆さんは、「消費生活アドバイザー」という資格をご存知でしょうか。1980年に設置されたこの資格制度は、年に1回の試験があり、2004年が25回目と比較的新しい資格制度です。この資格の保有者は、2004年4月時点で9,892人と、他の有名な資格と比べれば、まだまだ知名度の低いマイナーな資格かもしれません。でも、逆に言えば、まだまだ有資格者の少ない貴重な資格ともいえます。なぜなら、消費者のニーズが多様化し、商品やサービスも多様化・複雑化するこれからの時代には、最も必要とされる資格の1つといえるからです。
 「消費生活アドバイザー制度」とは、この資格制度を運営する日本産業協会によると、「消費者と企業または行政等との"かけ橋"として、消費者の意向を企業経営または行政への提言に反映させるとともに、消費者からの苦情相談などに対して迅速かつ適切なアドバイスができる人材を養成する目的で、経済産業大臣の認定を得て実施する技能審査(消費生活アドバイザー試験)に合格し、なおかつ一定の要件を満たした者に対し消費生活アドバイザーの称号を付与する制度」と説明しています。
 要するに、消費生活に関する幅広い知識を身につけることによって、日常生活では賢い消費者として、企業では消費者の視点から製品・サービスの企画・開発・広報部門のスペシャリストとして、そして行政では消費生活に関する専門スタッフとして、的確な助言の提供できる有為な人材として力を発揮すること、これが消費生活アドバイザーに期待される役割です。
 ただ注意して欲しいのは、この資格を取れば、具体的に何かの仕事に就けるという性格の資格試験ではありません。しかし、この資格とそのための勉強は、幅広い仕事・職業にも役立つという意味で、非常に応用範囲の広い資格といえます。たとえば、消費者のことを考えない企業などいません。だから、この資格を持っている人は無用と考える企業もいないはずです。とくに消費者と直接接するような仕事、たとえば、小売やサービス関係の企業で働く人には、きわめて重要な資格です。そのような企業のなかには、社員に消費生活アドバイザー試験の受験を義務付けているところもあるそうです。それほどに重要な資格となりつつあるのです。

2.いろいろな分野・場面で役立つ知識

 
ところで、CSという言葉を聞いたことがありますか。顧客満足(Customer Satisfaction)の略語です。現在、あらゆる企業が、生き残りをかけてCS戦略の構築に必死になっています。それは、顧客、つまり消費者の声を無視することが、ただちに企業の存立を危うくするからです。消費者の視点を的確に把握して、これを具体的な企業活動に活かすことは、現代企業にとって最も重要な戦略課題の一つとなっています。
 消費者は、同時にある地域の住民でもあり、国民、そして地球市民でもあります。つまり納税者として地方自治や国家行政を監視する役割も担っています。さらに地球という有限の惑星に住む人間として、環境問題の背景や私たちの生活との関わりに無関心でいることは許されない時代です。消費者の視点を中心に、生活者として、つまり、労働者、納税者、地域住民、地球市民としての自覚が、あらゆる分野で必要とされています。
 もしあなたが、卒業後の進路、なりたい職業が決まっていなくても、消費生活アドバイザーになるための勉強は必ず役に立つはずです。たとえば、何もしないプータロー、いやフリーターになったとしても、何かを買ったり利用したり、つまり消費者であることに変わりはありません。そして消費税も負担します。限られた収入を無駄なく使い、将来のために貯金するにも、やはり経済の仕組みや金融、税、年金の知識は必要でしょう。
 また、衣類の品質や食料品の安全性に関心を持ったことがある、今住んでいる家に不満を持ったことがある、商品や店舗に貼ってあるマークを気にしたことがある、病気やケガの時にお金の心配をしたことがある、売買契約やローンについて不安を感じたことがある、パソコンの説明書にある専門用語に戸惑った経験があるなど、これらはすべて消費生活の一場面です。ですから、消費生活アドバイザーの試験範囲にも含まれています。この資格を取得するための勉強は、日常生活に関する様々な問題に対して適切に対処するための貴重な知識・知恵を学ぶことでもあるのです。
 一般の会社員や公務員になったとしても、先ほど述べたように、消費生活に関する知識は必ず役に立つはずです。むしろ、消費生活に関するプロとして貴重な人材となるはずです。そして、各都道府県に必ずある消費生活センターには、専門の相談員がいます。この人たちのほとんどは、消費生活アドバイザーの資格を持っています。この資格が最も活かせる職業の1つです。

3.試験について

 ところで、消費生活アドバイザーの試験内容ですが、出題範囲は、以下のような4分野にわたり、かなり幅広い知識が要求されます。

@消費者問題
A消費者のための行政・法律知識
B消費者のための経済知識
 (経済一般、企業経営、生活経済、統計知識、地球環境問題)
C生活基礎知識
 (衣服と生活、住生活と快適空間、食生活と健康、医療と健康、社会保険と福祉、余暇生活、商品・
  サービスの品質と安全性、広告と表示、暮らしと情報)

 試験は、1次試験と2次試験があります。

1 次 1時間目:生活基礎知識(約20問)
2時間目:消費者問題と消費者のための行政・法律知識
(約15問)
3時間目:消費者のための経済知識
(約20問)
2 次 論文
60分
800字
×2

1時間目:消費者問題(1題)、行政知識(1題)、法律知識(2題)の計4題から1題を選択。
2時間目:経済一般知識
(1題)、企業経営一般知識(1題)、生活経済(1題)、地球環境問題・エネルギー需給(1題)の計4題から1題を選択。
面接 10〜15分、面接官3人対受験者、受験動機・目的、時事問題に関する質疑など。
・1次試験は、各科目とも平均65%以上程度の正解率が合格基準。
・各科目とも5問中2問を選択する形式か、語群から選んで空欄を埋める方式。
・2次試験は、合格基準がAからEのランクで、C以上となっています。

 ご覧のように、消費生活アドバイザーの試験科目と範囲は、他の資格試験と比較しても、類を見ない多さです。消費者問題はもとより、衣食住に関する知識、行政や法律に関する知識、経済学・経営学・統計学から、医療・福祉・社会保障に関する知識、さらにエネルギー問題や環境問題など生活に根ざした問題も数多く出題されます。そのうえ、関連するデータや資料に関する知識も問われるため、現実の社会の動きにも敏感でなければなりません。
 また、1次試験は選択式ですが、2次試験の論文試験では知識だけではなく、あるテーマについて自分の意見を要領よく短時間に書き上げる文章力も必要になります。もちろん、ワープロではなく手書きです。論文の基本である序論・本論・結論、あるいは起承転結といった文章構成力も問われることになります。
 実際、過去24回の試験の最終合格率は、平均で18%程度と、かなりの難関といえるかもしれません。合格までに2年、3年かかる人も多いようです。だからこそ、この難関をくぐりぬけた消費生活アドバイザーは、消費生活のプロフェッショナルと言えるのではないでしょうか。

4.なぜ、経済学部の学生に消費生活アドバイザーを薦めるか
 この資格に関心のある人には、もちろん資格取得を目指してがんばって欲しいと思いますが、資格を取ることよりも、むしろそのために行う勉強にこそ意味があると考えています。たとえ最終的の合格できなかったとしても…。
 では、なぜ、消費生活アドバイザーを薦めるのか、その理由を話しておきましょう。それは第1に、経済学部での勉強が役に立つからです。試験内容から分かるように、経済原論、経済統計、財政学、金融論、日本経済論、経済政策、租税論、地球環境論、社会保障など、経済学部で勉強する内容が消費生活アドバイザーの試験範囲の半分程度を占めているからです。もちろん、残りの分野については独自に勉強する必要がありますが、選択科目で民法や企業論、マーケティング論などを取れば、試験に必要な範囲の8割程度はカバーできます。残るのは、衣食住と消費者関連の法律の勉強ぐらいでしょうか。
第2に、この資格取得に最も有利な学部が経済学部だからです。これまで経済学部には、たとえば、公認会計士や税理士なら経営学部、弁護士や裁判官になるなら法学部、臨床心理士になるなら心理学部、医者になるなら医学部といったような直結する資格が、残念ながら見当たりませんでした。公務員試験も決して不利ではありませんが、他の学部でも大して変わりません。
 しかし、消費生活アドバイザーに関しては、その試験範囲から分かるように、経済学部が最も有利な学部といえます。たとえば、衣食住に関しては家政学部、法律に関しては法学部、企業経営に関しては経営学部でしょうが、これらの学部の多くの人が最も苦手とするのが経済関係科目なのです。その意味でも、経済学部こそが最も有利な学部ではないでしょうか。
 さらに、資格取得という目標を持つことで授業への態度も大いに変わると考えます。それと同時に、多くの科目を勉強する過程で、何らかの問題意識を持つ重要な契機になると思うからです。とくに、消費生活は日常的なことですが、これが経済学とどのように結びついているかを、自らの問題として考える重要な機会を与えてくれると思うからです。
 第3に、この資格、じつは4年前(平成13年)まで受験資格は満28歳以上でした。しかし、平成14年度の試験から年齢制限がなくなり、学生でも挑戦できるようになりました。こんなチャンス、活かさない手はないでしょう。もちろん、今のところ学生の合格率は低いようですが、だからなおさら、この資格を持つことの価値は大きいといえます。この資格を持った学生は、今のところ数えるほどしかいません。就職活動の有力な武器になることは間違いありません。というよりも、この試験に合格するような学生は、たとえ資格がなくても企業が必要とするような人材であるとは思いますが。
 第4は、逆説的ですが、この試験が簡単ではないからです。司法試験や公認会計士試験ほどではないにしても、かなり難しい部類の試験に入ります。大学の先生でも、何の準備もなければ合格することは無理です。おそらく、試験のための勉強には最低でも半年以上は必要でしょう。そんな難関だからこそ、目標にする価値があるのです。試験勉強も、単なる暗記だけでは無理です。特に2次試験の論文は明確な問題意識と、それを的確に表現する能力も問われます。面接試験では、何を聞かれるか分かりません。人柄・人格から問題関心の広さも問われます。私個人としては、この資格に合格することは大学の授業の10〜20単位分くらいの価値はあると思っています。

5.最後に
 実際の受験に関しては、この試験の概要を理解したうえで、2年生の学年末試験が終わった頃から本格的な受験準備を始めるのが理想的です。そして3年の秋にある試験を受け、最終的な合格発表は翌年の2月頃ですから、就職活動にも間に合うはずです。試験勉強の内容は、卒業論文にも活かせるはずです。これはあくまでも理想的なパターンですが、自分なりのスケジュールを立てることが大切です。
 最後に確認ですが、私は、決してこの試験制度を運営する日本産業協会の回し者でも、認定機関である経済産業省の手先でもありません。ただ、経済学部での勉強を活かせる資格の一つとして、この資格試験への挑戦を提案しただけです。もちろん、他の資格や試験に挑戦することも、大いに価値のあることだと思います。
 何らかの目標を立てることは、それに付随して多くの果実をその人に与えてくれるはずです。それが稀有壮大な目標であろうと、あるいは些細な目標であろうと、そんな目標すら持たない人間は、じつは多くの幸せの種を拾いそびれていることになるのです。だからこそ、少しでも自分にとって意味のある、そして価値のある目標を立てて欲しいと思うのです。
 特にヒューマンエコノミー学科の学生の皆さん。この学科は人間と経済を考えるための学科です。消費生活は、最も人間的で、しかも経済に関わる最も大切な生活の一部です。人間と経済に関わる諸問題を考えるための一つの手段として、消費生活アドバイザーという資格試験に挑戦してみてはいかがでしょうか。